iPhoneアプリ導入の経緯
Q 「quanp」はすでに様々なプラットフォームでサービスを展開されていますが、今回、iPhoneアプリを企画した背景と目的を教えてください。
今道:「quanp」をはじめとしたクラウドには「どこでも使える」という特徴がありますが、スマートフォンなどのモバイル端末は、クラウドの良さが最も発揮できるデバイスだと考えています。なかでもiPhoneはすでに市場の中で大きなボリュームを持ち始めているので、既存ユーザーへの対応デバイス拡大と新しい利用者の開拓の2つの側面からiPhoneに対応したアプリを開発することにしました。
iPhoneアプリ企画について
Q iPhoneアプリを企画する上で、最も大切なポイントは何ですか?
高橋:iPhoneにおいて特徴的なユーザーインターフェイスですね。基本的な機能は他のデバイス向けのアプリとほぼ同じですが、iPhoneらしい、シンプルで直感的な操作性や画面遷移を採り入れました。たとえばファイル送信する際も、ボタンを押すのではなく、画面上に表示されたファイルを指で滑らすような、「送信する」というより「送り出す」といったニュアンスのアクションを採用しています。Q iPhoneアプリを企画する上で、妥協したくなかった点はどんなところですか?
高橋:使いやすさと機能実装のバランスには、かなりこだわりました。たとえばリスト画面をはじめとして様々な画面ビューで、快適な操作感を実現するためにはファイルをある程度先読みさせる必要があるのですが、大量に先読みさせるとメモリの関係でアプリが落ちやすくなってしまいます。快適な操作感を実現することと、アプリとしての安定性とのバランスをどのあたりで取るかはずいぶん試行錯誤しましたね。Q 従来のサービスにはない機能はありますか?
高橋:iPhoneアプリならではということで、ファイル交換機能を新たに加えました。通常ではサーバーを通じたサービス提供が基本なのですが、ファイル交換についてはBluetoohを利用し、iPhone同士で直接ファイル交換をできるようにしました。Q 既存利用者の満足度アップにウエイトを置かれたのですか。それとも新規利用者の獲得を目指したのですか。
今道:先程もお話しましたように、どちらも視野に入れていましたが、マーケティングの視点では新規利用者を獲得したいという思惑はありましたね。そうした背景もあって、今回はIDを取らなくてもアプリケーションを使用できるようにしました。iPhoneからアプリケーションをダウンロードして、実際に使ってみることでその良さを実感していただき、その上で「quanp」のユーザーになっていただく−−そんなシナリオを描いたのですが、こうした試みは「quanp」では初めてのことです。先程高橋が説明した、ファイル交換もIDなしで使えるようにしてあります。 高橋: 「quanp」はこれまでITツールを日常的に使いこなすような、ITリテラシーの比較的高い方々がメインユーザーでしたので、3Dなどを使用した男性的なハードなデザインにしていましたが、iPhoneアプリはより広い層に普及させたいという意図もあって、iPhoneのマナーに沿ったニュートラルなデザインを採用しました。発表後の反響について
Q サービス全体の中で、iPhoneアプリの利用者に何か特徴はありますか?
今道:従来の「quanp」のユーザーの多くがiPhoneアプリを併用しているようです。iPhoneアプリを利用している方は、サービスの利用に関して非常にアクティビティが高いのが最大の特徴でしょうか。Q 利用者の反響はいかがですか?
今道: iPhoneアプリに対する反響は非常に大きくて、社内でも驚いています。問い合わせの数も、他のデバイス向けのアプリとは比べものにならないほど多くなっています。内容的には「とても便利だ」といった肯定的なものが多いですね。 高橋:現在、オープンβで展開しているアメリカでも予想以上の反響があります。「アメリカではiPhoneとセットでないと通用しない」と言われていましたが、iPhoneの影響力の大きさを改めて実感しています。Q 想定外の反応や使用方法などはありましたか?
高橋:iPhoneとiPadの間でファイルのやりとりをするのは面倒なのですが、「quanp」 iPhoneのファイル交換機能を使うと、簡単にiPhoneからiPadへファイルを送ることができます。それで「とても便利なツールだ」と紹介されましたが、これは当初想定していなかった使い方でしたね。
今後の展開について
Q 「quanp」というサービス全体の中で、iPhoneやスマートフォンは、今後どのような位置づけになるとお考えですか?
今道:先程申し上げたとおり、クラウドとモバイルはとても相性がいいので、今後大きなウエイトを占めるようになっていくと思います。ですから今回、スマートフォン市場が急速に拡大しているタイミングで、完成度の高いアプリをリリースできたことは、非常に意義が大きかったと思っています。 高橋:従来の携帯電話では、パケット代を気にされる方もいらっしゃいましたが、iPhoneは基本的にパケ放題ですから、大きなデータでも躊躇なく送ることができます。そういうこともプラスに作用して、どんどん利用者が増えていくのではないかと予想しています。Q こうしたサービスを展開することは、御社にとってどんなメリットがあるのでしょうか?
今道:弊社は複写機や印刷機などの紙の印刷関連機器の製造を事業の1つの柱としていますが、「これからの電子化社会にどう対応していくか」という課題が根本にありました。実は「quanp」とは、quantum paper(量子の紙)を省略した造語なんです。現状では「ファイル」という形を取っていますが、弊社ではこれを「電子の紙」と位置づけており、このような電子の紙を普及させて、社会的なインフラにすることを究極の目標としています。こうした取り組みは、これまでのところ順調に推移していると思っております。Q 今後の改善点やバージョンアップの予定などについてお聞かせください。
今道:今回リリースしたアプリは、従来の「quanp」にファイル交換機能を加えただけなので、今後、iPhoneやスマートフォンの特徴を活かした機能を追加したいと考えています。また、スマートフォンやiPadの登場で、生活シーンそのものが変わりつつあるので、そうした変化にも対応していきたいですね。 高橋:個人的にはGPSの機能を使いたいですね。現在、クラウドにある情報は「個人の持ち物」という感覚ですが、不特定多数の人たちとデータを共有するというのも、スマートフォンならではの利用法ではないかと思っています。たとえば、自分が撮った写真を「quanp」にアップして、その情報についてGPS機能を使って検索するなど、「他の人と共有するから楽しい」といった使い方も可能ではないでしょうか。 今道:「quanp」は「オンライン・ストレージ」と言われていますが、単なる「ファイル置き場」ではなく、ファイルを置くことによって様々な可能性が生まれてくるようなツールにすることが目標です。ですから共有などの新しい利用方法については、積極的に検討していきたいですね。どうもありがとうございました。
株式会社リコー
総合経営企画室新規事業開発センター CPS事業室ストラテジーユニット
今道 雄大
複合機の組み込みアプリケーションのプログラマ、ソフトウェアアーキテクトを経て、2009年よりquanpの商品企画部門に転向。現在は主にクライアントアプリの企画・推進を担当する。